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大阪高等裁判所 平成6年(ネ)3570号 判決 1996年1月31日

主文

原判決を取り消す。

被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

事実

第一  申立

一  控訴人

主文と同旨

二  被控訴人ら

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

第二  主張

次のとおり付加・訂正するほかは、原判決「事実及び理由」の「第二 事案の概要」(原判決一枚目裏一一行目から同五枚目裏八行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。

1  原判決二枚目表三、四行目の「佐用フェージョンを「佐用フュージョン」と改める(以下同じ)。

2  同三枚目裏六行目「告げ」から七行目の「返還した。」までを次のとおり改める。

「告げるとともに、その完成遅延に関連して平成三年一二月二六日に六〇万円を交付した。」

3  同四枚目裏七行目の「本件売買」から八行目の「一体化している。」までを「本件売買契約は、会員権(施設利用権)の付いた本件不動産を目的とする一個の売買契約というべきである。」と改める。

4  同五枚目裏五行目の「(1)」の次に「被告は、平成四年九月までに屋内プールを完成させることを予定していたが、その時期までに完成させる義務まで負っていたわけではないから、」を加える。

5  物件目録の一〇行目のあとに次のとおり加える。

「敷地権の種類 所有権

敷地権の割合 二七四四三〇分の六六〇〇」

第三  証拠(省略)

理由

一  争点1について

本件契約の締結をめぐる事実関係は、次のとおり付加するほかは、原判決の認定(五枚目裏一一行目から同六枚目裏一一行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

同六枚目裏一一行目と同七枚目表一行目の間に次のとおり加える。

「2 以上の認定事実に照らせば、会員権の購入契約は、不動産の売買契約と同時に、これに随伴して締結されるのが通例であったことが認められるけれども、本件不動産と本件会員権とは財産権としては別個独立のものであり、売買契約の客体としても別個のものであることは明らかであって、「会員権付きのコンドミニアム」というのは通俗的かつひゆ的な表現にすぎないから、本件不動産と本件会員権とが一個の客体として本件売買契約の目的となっていたものとみることはとうていできない。すなわち、法律的には、本件契約は本件不動産の売買契約と本件会員権の購入契約の二個の契約より成り、両契約が「一体のもの」と認めることはできないというべきである。」

二  争点2について

本件会員権の購入契約上、控訴人において平成四年九月までに屋内プールを完成させるべきことを約し、その義務を負担したものと認められるかどうかの点はしばらく措き、仮にそのような義務を負担したものとしても、その義務の不履行を理由に、それとは別個の契約である本件不動産の売買契約を解除することができるかどうかの点について検討することとする。

二個の契約のうち一方の契約上の義務の不履行を理由に他方の契約を解除することができないことは当然のことであるが、本件のように、会員権の購入契約が不動産の売買契約を同時に、かつそれに随伴して締結されたような場合であって、会員権購入契約にもとづく控訴人の義務が約定どおり履行されることが不動産の売買契約を結んだ主たる目的の達成に必須的でありかつそのことが売買契約において表示されていたのにこれが履行されないときには、いわゆる付随的義務の不履行の場合と同様、売買契約の要素をなす債務が履行されない場合に準じて、その不履行を理由に売買契約を解除することができるものと解するのが相当である。

そこで、右のような前提に立って本件の場合について考えてみるに、被控訴人両名の本人尋問の結果によれば、被控訴人らとしては、屋内プールを利用することが本件不動産購入の重要な動機となっていたことが窺われないではないけれども、証人中村信行の証言及び被控訴人両名の本人尋問の結果によれば、被控訴人らとしては、本件不動産売買契約を締結するまでの間にその旨を控訴人側に表明したことはなく、契約が締結され代金の支払いも終わった後になってそのことを言い出したものであることが認められるので、右の事情は本件不動産の売買契約においてなんら表示されていなかったものといわなければならない。

そうすると、仮に屋内プールの完成の遅延が本件会員権購入契約上の債務不履行にあたるとしても、それを理由に、本件不動産の売買契約の要素をなす債務が履行されない場合に準じてこれを解除することはできないといわなければならない。

三  結論

以上の次第で、本件不動産の売買契約が有効に解除されたことを前提とする被控訴人らの本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく失当であるからこれを棄却すべきところ、これを認容した原判決は不当であるからこれを取り消し、被控訴人らの請求を棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、九三条一項本文、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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